乳がんセルフチェックの大切さ
早期発見で完治が見込める疾患
乳がんは、早期発見して適切な治療を受けることで高い確率で完治を見込むことができる疾患ですが、乳がんも他のがんと同じように初期症状がないことが多く、気づきにくい特徴があります。ここ数年、欧米では「乳房を意識する」という意味するBreast Awarenessという、乳房を意識した生活習慣を勧める考え方です。
- 乳房を普段から意識する
- 定期的なセルフチェックを心がけ、乳房の変化に早めに気づけるようにする
- 気になる症状があれば早急に専門医に相談する
- 適齢期になったら定期的に乳がん検診を受ける
乳房を意識した生活を送る中でセルフチェックを行うことが大切です。毎月ご自身で乳房のチェックを行うことで、小さな変化・しこりを発見することができます。セルフチェックに加えて、早期に医師へ相談することができれば、乳がんの10年生存率が95%まで上昇します。
「しこり」は乳がんを発見するきっかけ
乳房のしこりの8~9割は乳腺線維腺腫・乳腺症などの良性のものであり、残りの1~2割は乳がんの可能性があります。このため、しこりは乳がんを発見するきっかけになります。乳がんはセルフチェックにおいて早期発見・早期治療ができれば、低侵襲の治療で完治を見込むことができます。セルフチェックで何か違和感を覚えた場合には、お早めにご相談ください。
定期的なセルフチェックと毎年健診を受けましょう
乳がんを早期発見するため、定期的な乳がん検診はとても大切ですが、検診だけに頼るのではなくセルフチェックも併せて行う習慣をつけましょう。これにより、次回の検診までに変化があれば早期発見が可能になります。
乳がんのセルフチェックは外側上方を念入りに
乳がんは乳腺が多い外側上方で発症しやすく、外側(片側)上方53%・内側(心窩部側)上方19%・外側上方14%・内側下方6%・乳輪部4%・その他、全体4%となっています。セルフチェックにおいては好発部位を入念に行いながら、全体もチェックすることが大切です。以下のしこりセルフチェックのやり方・ポイントを参考にしてください。
しこりセルフチェックのポイント
タイミング
月経開始後~7日目を目安にセルフチェックを行いましょう。また、閉経後の方は、ご自身で毎月決めた日にチェックを行うことをお勧めします。
見た目・触診
入浴前
1
入浴前、鏡の前で両腕を下した体勢で、乳房・乳頭全体の観察をします
2
両腕を頭上まで上げ、乳房を正面・側面・斜めから観察します。
3
乳頭を軽く摘み、血が混じった分泌物の有無を確認します。
入浴中
※ボディソープ・石鹸を手につけておくことで触診の際に触りやすく、乳房の変化がわかりやすくなります。
1
片方の肘を乳房の高さまで上げ、もう一方の手で乳房全体の表面に円を描くように触ります。しこり・こぶの有無を確認します。
2
指先を揃え、左腋下は右手指で、右腋下は左手で腋下を触ります。このときに腋下にあるリンパ節が腫れていないか確認します。
就寝前
※仰向けになってチェックする乳房側の肩下に薄いクッションを置きます。
1
右乳房の場合、右手を頭の後ろに左手の手指を揃え、乳房の内側半分を肋骨に触れるほど圧迫し、しこり・こぶの有無を確認します。左乳房も同様に行います。
2
肘を少し下げ、外側の乳房全体を指の腹で押します。このときにしこり・こぶを確認します。
3
手指を揃え、腋下に触れます。リンパ節周辺にしこり・こぶの有無を確認します。
しこりセルフチェックのやり方
調べる方の乳房側の腕を上げ、反対の親指を除いた4本の指の腹で確認します。乳房を摘むように持つとしこりがあるように勘違いする可能性があるため、乳房は指の腹で押す程度にします。セルフチェックは片側のチェックが全て終えたら、反対側を行うようにしましょう。
1
乳房全体をくまなくチェック
乳房の上半分内側から、外側~内側にかけて乳房を寄せるように指で満遍なく触れます。
2
乳房の中央部分をチェック
乳房の中央部分を触診する際、指先が乳房の下にある肋骨が触れる程度まで押します。指に何か触れた場合、グリグリと回すように触れ、しこり・こぶの有無を確認します。
3
乳房の下部分をチェック
乳房の下半分は、脂肪が厚くしこりやこぶがあっても発見しにくい場所です。調べる乳房の反対の手で乳房を持ち上げ、下から乳首の部分に向けて触れます。このときに指の腹に肋骨が触れる程度までしっかり触るようにしましょう。
4
鎖骨~乳房の上部分をチェック
調べる方の手を腰に当て、反対の親指を除いた4本の指の腹全体で鎖骨~乳房の外側を肋骨に従って乳房の内側に寄せて触れます。その後、徐々に指を下げて乳房の下部分も確認します。
5
脇・乳房横のしこりもチェック
しこりは乳房脇ができることや、リンパ節が腫れることもあります。調べる乳房の方の手を腰に当て、反対側の親指を除いた4本の指の腹を腋下に入れて押し込むように乳房の脇とリンパ節の腫れを確認していきます。皮膚をつままないように注意し、最後に腋下から乳房の外側、乳頭に向けて斜めに触れるように確認を行います。
6
乳頭からの異物をチェック
調べる乳房と反対の親指・人差し指を縦の方向から乳房を持ち、絞り出すように乳頭に向けます。指を滑らせながら、乳頭を親指・人差し指で絞るように挟みます。しこりの他にも血性の分泌物・炎症性の分泌物が乳頭から出ていないか確認しましょう。