内分泌疾患とは
ホルモンとは、体を正常な状態に維持するための生理活性物質を指します。体内で分泌されたホルモンは、血液などを通って標的となる臓器で機能を発現させます。分泌させるホルモンには適正な量があり、多くても少なくても体のバランスが保てなくなって体調に変化があらわれます。ごくありふれた体調変化があった際は、それがホルモン異常による病気である可能性があるため、注意が必要です。 ホルモンの病気は、分泌される器官により異なります。主な症例としては、甲状腺疾患、副甲状腺疾患、副腎疾患、下垂体疾患、性腺疾患、電解質異常などが挙げられます。
甲状腺について
甲状腺とは、頸部前面(のどぼとけの下)に位置する縦5cm×横4cmほどの臓器です。蝶が羽を広げたような形をしており、この甲状腺から分泌されるホルモンが甲状腺ホルモンです。甲状腺ホルモンは、全身ほとんどの細胞に作用し、エネルギー代謝やエネルギー産生を促進する機能があるため、過不足により以下のような様々な症状が現れます。
甲状腺のホルモンの働き
甲状腺ホルモンは、代謝、循環、生殖といった、体の組織全体を正常に発達・成長させるようコントロールする働きがあります。成人における具体的な機能としては、心拍数や心臓からの血液の流出量を増加させることで、脂肪の合成・分解を促進させる、熱産生を向上させる、腸の運動を刺激して骨代謝を向上させるなどの働きをしています。
甲状腺疾患の症状
甲状腺ホルモンの分泌が過剰な状態に陥ると、イライラ、動悸、多汗、手の震え、眼球の突出や甲状腺の腫れなどの症状が現れます。一方、甲状腺ホルモンの分泌が不足すると、肌の乾燥や気力の衰え、体重増加、便秘、寒がり、眉毛が抜けるといった症状が現れます。どちらも、いわゆる「不定愁訴(体に異常がないにも関わらず、体調不良を訴える状態)」と混同されてしまうことがありますので、注意が必要です。甲状腺の疾患は、男性に比べ女性の方が多くみられる傾向があります。
内分泌内科(甲状腺)の主な対象疾患
バセドウ病
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが過剰に分泌することで起こる病気です。これは自己免疫性疾患のひとつで、20~30代の女性に多く見られます。バセドウ病になると、動悸・手の震え、体重減少、発汗などの症状が見られ、人によっては目が飛び出たような状態になることもあります。バセドウ病の治療法としては、内科的療法・放射線療法・手術療法などが一般的です。当院では、抗甲状腺薬を服用する内科的療法を行っており、手術療法が必要な場合は、専門の医療機関を紹介しております。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は、甲状腺が炎症することで、甲状腺ホルモンの分泌が過剰となる病気です。主な症状としては、甲状腺の腫れや発熱・痛みなどが挙げられます。原因としてはウイルス感染が多く、一般的に風邪を引いた後に発症します。数カ月程度で自然治癒しますが、炎症が強い場合には、抗炎症薬投与、動悸が収まらない場合にはβブロッカーなどを投与します。
亜急性甲状腺炎
亜急性甲状腺炎は、甲状腺が炎症することで、甲状腺ホルモンの分泌が過剰となる病気です。主な症状としては、甲状腺の腫れや発熱・痛みなどが挙げられます。原因としてはウイルス感染が多く、一般的に風邪を引いた後に発症します。数カ月程度で自然治癒しますが、炎症が強い場合には、抗炎症薬投与、動悸が収まらない場合にはβブロッカーなどを投与します。
慢性甲状腺炎(橋本病)
甲状腺ホルモンの分泌が低下することで起こる病気として、慢性甲状腺炎(橋本病)が挙げられます。甲状腺機能が低下することで、肌の乾燥や気力の衰え、体重増加、便秘、寒がり、眉毛が抜けるといった症状が現れますが、上記の通り不定愁訴と捉えられることも多く、原因を特定することが難しいとされています。慢性甲状腺炎もバセドウ病と同じく、自己免疫性疾患のひとつで30~40代女性に多く見られます。また、検査を受けても、初期では甲状腺機能が正常と判断され、その後徐々に甲状腺機能が低下してくることもあるため、気になる方は再検査することをお勧めします。具体的な治療方法がなく、甲状腺ホルモン量の低下に伴って、甲状腺ホルモン内服薬を処方します。
甲状腺疾患の検査
血液検査
血液検査では、まず、血中の甲状腺ホルモン量が多いのか少ないのかを調べます。具体的には、脳の下垂体から分泌されて甲状腺の機能を調節する「甲状腺刺激ホルモンTSH」と、甲状腺から分泌される「甲状腺ホルモンFT3」「甲状腺ホルモンFT4」の3つの値を測定します。3つを測定する事により、甲状腺の機能が低下していても、治療を必要とするレベルかどうかなど、甲状腺の機能がどのような状態か詳細に調べることができます。次に、甲状腺の機能に異常が見つかった場合、その異常の原因を調べます。具体的には、血液検査で甲状腺を攻撃する、「抗サイログロブリン抗体」や「TSHレセプター抗体」を測定する事により、異常の原因を特定できます。
超音波検査
甲状腺の状態を画像で確認するために行われるのが、超音波検査です。人間の耳では認識できない高い周波数の音波を使って甲状腺を可視化するもので、人間ドックで肝臓や胆嚢を検査するのと同じ技術です。放射線(X線)を使わないので、被ばくの心配がありません。超音波検査は、甲状腺のしこりや腫れを発見する際に、特に効果的です。検査の結果、悪性の甲状腺腫瘍が疑われる場合は、腫瘍に針を刺して細胞を検査する「細胞診」を行います。
甲状腺疾患の治療
甲状腺疾患の治療は、バセドウ病をはじめとする甲状腺機能亢進症、あるいは橋本病をはじめとする甲状腺機能低下症など疾患により異なります。状態に応じて、薬物療法や放射性ヨウ素内用療法(アイソトープ療法)、手術などを提案させていただきます。また、甲状腺疾患に伴う合併症(心房細動や眼球突出など)がある場合は、合併症の治療を行うことがあります。