胃潰瘍とは
胃潰瘍とは胃液に含まれる塩酸や消化酵素によって胃粘膜が消化されてしまう疾患です。 通常は粘液が胃粘膜の消化を予防し、修復を助けていますが、なんらかの原因によって粘液の保護が不足して胃粘膜が消化され、胃潰瘍を発症します。 よく気がついて責任感が強く、神経質で几帳面な方の発症が多いことが知られています。 以前は男性の発症が多かったのですが、現在は50代女性や若い世代の発症にも増えてきています。
胃潰瘍の症状
みぞおち周辺の痛み
胃潰瘍の自覚症状では90%が腹痛を訴え、その多くはみぞおち周辺の痛みです。 胃潰瘍は食後に痛みを生じることが多く、食べ過ぎると食後の痛みが長く続きます。 痛みには個人差が大きく、軽度の潰瘍で強い痛みを感じることもあれば、悪化していてもほとんど痛みを起こさない場合もあります。気づかない内に胃に穴が開き、穿孔性潰瘍をおこし緊急手術が必要になることがあります。
胸焼け・呑酸、吐き気・嘔吐、食欲不振、体重減少、口臭
胸焼けや酸っぱいゲップが上がってくる呑酸、吐き気・嘔吐も生じやすい症状です。 胸焼けや呑酸は胃液分泌が過剰になって食道への逆流を起こすことで生じます。 こうした症状が食欲不振につながり、体重減少を起こすこともあります。口臭は、幅広い胃疾患で生じやすく消化器疾患の発見につながる症状です。
吐血・タール便
吐血では、胃酸によって黒みがかった血液が出てきます。吐血せずに黒く粘り気のあるタール便を生じることもあります。 また、動悸や脈の乱れ、冷汗、血圧低下、激痛などを起こしている場合は大量の出血が疑われ、早急な受診が必要です。 タール便は胃潰瘍や十二指腸潰瘍だけでなく、胃がんや大腸がんによって生じることも多い症状です。 黒い便が出た場合は、少量で1回だけの場合でもできるだけ早く当院までご相談ください。
背中の痛み
炎症が周囲の臓器に及んだ場合、背中や腰に痛みを生じることもあります。 特に背中の痛みは膵臓にダメージが及んでいる可能性があり、早急な受診が必要となります。 お気軽にご相談ください。
胃潰瘍の原因
ピロリ菌感染
胃潰瘍は原因の7割以上がピロリ菌とされています。 ピロリ菌は幼少期に経口感染して慢性胃炎となり、炎症が進行して、一部が慢性胃潰瘍を発症します。 ピロリ菌感染が原因の胃潰瘍は、抗生物質による除菌治療に成功することで再発率を大きく下げることができます。
ストレス
疲労や睡眠不足、緊張・イライラ、不安などによる心身へのストレスは、胃潰瘍の発症や悪化に大きく関与します。強いストレスによって急性胃潰瘍を発症することもあります。
飲食物による刺激
唐辛子など刺激の強い香辛料、熱い・冷たい飲食物の過剰摂取を続けると胃への強い刺激が繰り返されて粘液による保護や修復が追いつかなくなり、潰瘍を生じることがあります。
痛み止めやステロイドなど薬の副作用
非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)やステロイドは副作用として消化管の粘膜に大きなダメージを及ぼすことがあります。 非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、腰痛、膝痛、関節リウマチなどで処方されることが多く、さらに市販薬に含まれている場合もあります。 短期間の服用でも胃潰瘍を発症することもあります。
喫煙・飲酒・コーヒー
喫煙は胃粘膜の血流を低下させるため胃潰瘍の誘因になります。 また、大量の飲酒も胃へ大きな負担をかけ、胃潰瘍発症や悪化の原因になります。コーヒーも1日に何杯も習慣的に飲むと胃潰瘍発症のリスクを高めてしまいます。
暴飲暴食、早食いなどの食習慣
暴飲暴食、就寝直前の食事、早食いなどの食習慣が胃に負担をかけ続けて胃潰瘍発症や悪化のリスクを高くしてしまいます。
胃潰瘍の治療
胃粘膜の状態を正確に把握するために胃カメラ検査を行います。 潰瘍から出血が認められる場合には検査中の止血処置も可能です。 組織採取をして病理検査を行い、確定診断し、ピロリ菌感染の有無も確認できます。 胃潰瘍は高い効果を期待できる薬が登場し、現在はほとんどが薬物療法で治療できるようになっており、2~3か月の治療で粘膜の状態が改善できるケースが多くなっています。 途中で治療を中止してしまうと再発を繰り返し、大出血や穿孔など緊急手術が必要な状態になってしまう可能性もあるため、潰瘍や炎症が治るまで治療を続けることが重要です。 薬の副作用が原因の場合には、処方の変更なども検討します。 食習慣・食生活の見直し、ストレスの上手な解消、禁煙など生活習慣の改善も悪化や再発予防のために重要です。