便秘について
便秘と言うと、「毎日便通があるわけではない」「コロコロして硬い便が出る」「下腹が痛くなる」「お腹が張って妊婦さんのように膨らむ」といったイメージを持つ方が多いでしょう。要するに、排便が難しくなり苦痛を感じる状態です。 実は便秘には明確な定義が存在し、慢性便秘症ガイドライン(2017年版)では、便秘とは「本来体外に出すべき糞便を十分量かつ快適に排出できない状態」と定義されています。また、便秘による不快感を伴う症状があり、検査や治療が必要な場合は「便秘症」と定義されます。快便でないと便秘なのですが、具体的には、以下のような状況が4回に1回以上の排便で起こる場合、「便秘」と判断されます。
- 排便が週に3回未満となる
- 強くいきまないと排便できない
- 残便感がある
- ウサギの糞のようにコロコロした便になる
- 肛門付近に便が詰まっている感覚があり、排便が難しい
- 肛門周囲を押したり、手を使ってかきだしたりしないと排便できない
便秘症の治療の目的は、排出すべき糞便を、「十分に」かつ「快適に」排出することです。つまり、排便回数を増やすことが目標ではなく、排便に関する不快感を解消し、生活の質を上げることが目標です。排便回数はあくまで便秘の評価項目の1つに過ぎません。 便秘外来では、こうした目標を実現するためのサポートを実施しています。
便秘の原因
便秘の原因は多岐にわたります。ダイエットで食事量を減らしたり、ストレスが溜まったりすることで便秘になることがあります。こうした生活習慣や環境の変化による便秘はどなたにでも起こり得ますが、生活習慣を改善することで便秘が解消することも多々あります。便秘外来を受診するほどお困りの方でも、食事や運動を見直すだけで便秘が解消されることもよくあります。 しかし、ご自身では改善できないことによって便秘が起こることもあります。一例ですが、便秘の主な原因の1つに加齢があります。厚生労働省の調査によれば、年齢とともに便秘になる人が増えることが分かっています。特に男性では60代以降に便秘を自覚する人が急増します。この理由はいくつか考えられ、例えば、仕事を退職することで生活のリズムが現役時から大幅に変わり、運動量が減り、精神的な変化が起きることで便秘になることがあります。さらに、年齢とともに食事量や筋肉量が減少することも便秘に大きく影響します。
女性の便秘の原因
女性では、若い頃から便秘に悩む方がよく見られます。研究調査によると、女性の約5割が自分を便秘と自覚しているという報告があります。女性は思春期を迎えると女性ホルモンの分泌が増え、生理が起こり始めます。生理には黄体ホルモンと卵胞ホルモンの2種類の女性ホルモンが深く関係しますが、そのうちの1つである黄体ホルモン(プロゲステロン)は便秘を引き起こす原因の1つです。黄体ホルモンは子宮内膜を厚くして妊娠の準備をする役割がありますが、同時に体内の水分を保持しようとするため、腸内の水分が吸収されて硬い便が排泄されるようになります。また、黄体ホルモンが多く分泌されると腸の動きが悪くなり、便秘が起こりやすくなります。生理が始まると黄体ホルモンの分泌が低下し、便が軟らかくなり腸の動きが活発になるため、便秘から一転して下痢になることもあります。このように女性はホルモンの影響で便秘になりやすい状況に置かれます。便秘が何度も起こることでトイレを我慢する癖がつき、直腸の感覚が鈍り、便意を催さなくなって慢性的な便秘に繋がることもあります。 便秘の原因が疾患の可能性もあります。整形外科疾患(脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアなど)、脳血管疾患(パーキンソン病など)、精神科疾患(うつ病など)は、罹患すると病気の影響で便秘が起こりやすくなります。また、大腸がんが進んで腸の通り道が障害されると排便に影響します。糖尿病や甲状腺機能低下症も便秘の原因となります。これらの便秘の原因となる基礎疾患を調べるために、血液検査や内視鏡検査を行うことがあります。