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骨盤臓器脱

骨盤臓器脱

女性の骨盤の底の部分には「産道」という大きな穴があり、これは出産時の赤ちゃんの通り道にあたります。この穴を覆うように骨盤底筋群と呼ばれる筋肉が張られ、膀胱、子宮、直腸などの臓器が落ちるのを防いでいます。骨盤臓器脱とは、出産、肥満、加齢などが原因で骨盤底筋群が弱まり、筋力が低下することで、支えきれなくなった臓器が下垂して、膣から臓器が脱出してしまった状態です。もし、股に何かが挟まったような感じがして歩きにくかったり、膣内に異物感があったり、膣からピンポン玉のような柔らかいものが触れることができたり、外陰部が下に引っ張られる感覚があったりする症状があれば、骨盤臓器脱の可能性があります。経産婦の3分の1が経験するとされており、決して命を落とすような病気ではありませんが、悪化するとQOL(生活の質)が大きく低下します。骨盤臓器脱の治療方法には、生活改善、保存的治療、外科的手術などがあります。当院では、患者様のお身体とご希望を考慮し、最適な治療法をご案内していますので、安心してご相談ください。

骨盤臓器脱の分類

骨盤臓器脱の分類は、下垂する臓器によって行われています。以下にその分類を示します。骨盤臓器脱診断は困難で、専門医による診察が必要となります。また、手術中に判断されることもあります。

膀胱瘤(膀胱脱)

弱体化した膣壁と共に、膀胱が下垂するタイプ(60%ほど)

直腸瘤

弱体化した膣壁と共に、直腸が下垂するタイプ(20%ほど)
肛門から直腸が直接脱出する「直腸脱」とは異なります。

膀胱瘤(膀胱脱)

弱体化した膣壁と共に、膀胱が下垂するタイプ(60%ほど)

子宮脱

子宮を支持する靭帯や筋肉が衰え、子宮が下垂するタイプ(15%ほど)

その他

小腸瘤、膣断端脱など(5%ほど)

骨盤臓器脱の症状

骨盤臓器脱は軽度であれば基本的に自覚症状が乏しいですが、個人差が大きく、軽度でも症状に気付く場合もあります。尿道脱や膀胱瘤があると頻尿や尿失禁が起こりますが、膀胱瘤は悪化すると排尿困難に至ることもあります。直腸瘤では便秘や排便困難が見られ、悪化すると指を膣内に挿入して直腸を押さないと排便が難しくなる場合もあります。子宮脱では、外陰部が引っ張られるような感覚や膣内に異物感を覚えます。例を挙げると、「体の中で何かが落ちていく感じがする」「椅子に座るとボールの上に乗っている感じがする」といった訴えをよく伺います。子宮脱が悪化した場合、子宮がさらに膣内から飛び出し、膣口にピンポン玉のようなものが現れ、炎症を伴うこともあります。どのタイプでも、横になると症状が落ち着くのが特徴です。重力による臓器の下垂が原因のため、寝ている間は症状がなく、起床後、立っていると次第に症状が強くなります。骨盤臓器脱は命に関わるものではありませんが、生活の質を大幅に低下させる疾患です。

骨盤臓器脱の原因

出産

骨盤臓器脱の最大の原因は、経膣分娩だとされています。出産時に赤ちゃんの頭が産道に長時間留まることで、骨盤底筋が引き伸ばされ、筋肉と神経に障害が生じ、その結果、骨盤底筋の収縮力が低下して骨盤臓器脱になりやすいです。経膣分娩をして3,500グラム以上の大きな赤ちゃんを産んだ方は特に注意が必要です。また、妊娠中の喫煙、高齢出産、会陰切開も骨盤臓器脱のリスクを高めます。さらに、吸引分娩や鉗子分娩の場合にも、子宮が脱出してしまうことがあります。

骨盤底支持組織の異常

常に腹圧がかかる体勢や生活習慣も、骨盤臓器脱の原因となります。例えば、長時間の立ち仕事、庭仕事、農業、特定のスポーツ、肥満、便秘などが骨盤臓器脱のリスクを高めます。また、喘息や花粉症による咳やくしゃみ、コルセットやガードルの長期使用、介護での重い物の持ち運び、さらには更年期や加齢も骨盤臓器脱の要因になります。また、あまりないですが、子宮筋腫や子宮がんで子宮を摘出した場合、子宮があった場所に他の臓器が落ち込んで、骨盤臓器脱となることがあります。

骨盤臓器脱の治療

骨盤底筋訓練

臓器が大きく下垂していない場合、「骨盤底筋訓練」を行い、弱体化した骨盤底筋群を強めることで、症状が回復します。なお、中程度以上の下垂に対しては効果が期待できませんので、他の治療法を選択します。

ペッサリーリング

膣内にペッサリーリングを入れることによって、骨盤内の臓器の下垂を防止することができます。排便時に過度にいきむとリングが膣外に落ちてしまったり、出血したりおりものが増加したりすることもあり、長期の使用に適さない方もいます。リングはこまめに交換します。

手術による治療

強い症状を示している場合、または、骨盤臓器脱が中等度以上の場合には、手術を検討することがあります。下垂した臓器やその程度により術式を変えて、症状の軽減を試みます。