卵巣がんについて
卵巣にできる腫瘍は「卵巣腫瘍」と呼ばれます。腫瘍内部に水が溜まっている場合は「卵巣嚢腫」と呼びます。これが悪性の腫瘍であれば「卵巣がん」と診断されます。 卵巣がんは、悪性度によって良性、境界悪性、悪性に分類されます。また、がん細胞の起源である組織によって、上皮性、胚細胞性、性索間質性に分類されます。卵巣がんは、上皮性の場合は、卵巣の上皮細胞に由来し、胚細胞性の場合は卵胞内の生殖細胞に由来し、性索間質性の場合は性腺ホルモンを産生する性索組織や間質組織に由来します。良性腫瘍には、上皮性の漿液性嚢胞腺腫や胚細胞由来の皮様嚢腫などの組織型があります。悪性腫瘍の大半は上皮性卵巣がんで、粘液性がん、明細胞がん、漿液性がん、類内膜がんなどの組織型が多くを占めます。珍しい疾患ですが、胚細胞性卵巣悪性腫瘍が若年者に多く見られます。また、子宮内膜症で卵巣に形成される腫瘍は「卵巣チョコレート嚢胞」と呼ばれます。 卵巣がんには、不妊症、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(BRCA遺伝子変異)、未妊、未産などのリスク要因があります。卵巣チョコレート嚢胞は0.7〜1%の頻度で悪性化するため、治療を行わない場合でも定期検査で病巣の状態をモニターする必要があります。 初期の卵巣がんは自覚症状がほとんどなく、初期の段階で見つかる場合は、他の症状で検査中にたまたま見つかったり、定期検診で見つかったりすることが多いです。病状が悪化すると腫瘍が成長し、腹部にしこりや膨満感、膀胱などの圧迫による腰痛や下腹部の痛みが起こることがあります。 また、良性卵巣腫瘍がねじれる「卵巣腫瘍茎捻転」は、癒着していない良性卵巣腫瘍でも生じる疾患で、急激な下腹部痛を引き起こすため、早急な手術が必要です。
卵巣がん検査について
卵巣がんの検査では、最初に問診と内診を実施し、そして超音波検査が行われますが、特に超音波検査が重要になります。超音波検査は、腟または腹部に器具を当てて行われ、この検査で卵巣の大きさ、位置、腫瘍の有無が確認でき、腫瘍が見つかった場合はその良性・悪性も評価します。ここでは、腫瘍が悪性であるかどうかは、日本超音波医学会の日超医分類や世界的に使用されているIOTA分類を使って評価します。
さらに、詳しい検査が必要であるとされれば、CTやMRIなどの画像検査や腫瘍マーカーを調べる血液検査が行われます。これらの結果から悪性腫瘍の可能性がある場合や、痛みなどの症状が激しい場合は、手術を行うために連携している高度医療機関をご案内します。