PMS(月経前症候群)について
生理前の時期は、普段よりイライラする、お菓子を欲するようになる、胸が張って痛いと感じる方がいらっしゃると思います。これらの症状は「PMS(Premenstrual Syndrome、月経前症候群)」と呼ばれます。PMSは生理の3~10日前から始まりますが、生理が始まると症状が軽減し、消失していきます。PMSの症状は200種類以上あるため、今お悩みの症状がPMSによるものかどうか、ご自分で判断するのは難しいでしょう。 以下の症状に該当する場合は、お気軽に当院までご相談ください。
PMSの症状
身体的症状
- 頭痛が起こる
- ニキビや肌荒れなどのトラブルが起こる
- むくむ
- 乳房が張って痛い
- 下腹部が張って痛い
- 体重が増えた
- 眠気、不眠などの睡眠障害
- 疲れやすくなった
精神的症状
- 泣きそうになる
- 頭がぼーっとする
- 憂うつな気分になる
- イライラする、普段より怒りっぽくなる
- 情緒不安定になる
- 落ち着かない
- 周囲に八つ当たりしてしまう
- 集中力が続かない
PMSの診断基準
- 過去3ヶ月の生理周期において、生理前5日間で、上記で示した身体的症状または精神的症状について1つ以上該当する場合
- 症状は生理開始後4日以内に軽減し、13日目まで再発しない場合
- 症状は、アルコール、ホルモン剤、薬物の摂取によるものではない場合
- 診療開始後~3ヶ月の間、症状が確実に継続して起きている場合
- 社会的または経済的活動に、明白な支障がある場合
PMSの原因
現在のところ、PMSの原因は明らかになっていません。ただし、下記の2つの要素が関係しているものと言われています。
プロゲステロン(黄体ホルモン)の影響
排卵から生理が始まるまでの期間に、「プロゲステロン」という女性ホルモンが分泌されます。プロゲステロンは妊娠を維持するためのホルモンですが、体内の水分を保持する役割を有しています。その結果、水分が体内に溜まるようになり、身体がむくみやすくなります。また、頭や乳房に水分が溜まると、頭痛や乳房の張りや痛みが生じます。さらに、体内に水分が溜まることで、全身の倦怠感が起きやすくなります。
セロトニン(脳内物質)の低下
排卵後は、エストロゲン(女性ホルモンの一種)の分泌が少なくなります。その結果、脳内で作られるセロトニン(神経伝達物質の一種)が少なくなります。セロトニンは、「幸せホルモン」として知られており、減少に伴ってイライラ・うつなどの精神症状が起こります
PMSの治療
ホルモン療法
低用量ピルなどを使用したホルモン療法があります。このホルモン療法は排卵を抑え、体内のホルモンを一定に保ち、それによってPMSの症状を軽減します。また、ニキビや肌荒れなどの肌のトラブル改善も見込まれます。このホルモン療法はPMSのみならず、女性ホルモンの不足によって生じるトラブルの治療にも効果があります。
漢方薬療法
婦人科領域における、PMSなどの不定愁訴(ふていしゅうそ)に対し、漢方薬は非常に効果を示します。PMSの症状は人によって異なるため、問診でお悩みをお伺いし、症状や体質に合う適切な漢方薬を処方します。漢方薬は副作用のリスクが低いので、ピルの副作用が心配な方にも使用をお勧めできます。
SSRI(抗うつ剤)
精神的な症状が強い場合は、生理前の期間に抗うつ剤を服用します。生理が始まると服用をストップし、PMSの症状が再び起きた際に服用を再開することで、気分の安定を図ります。この方法は、通常のうつ病の薬物療法とは異なり、PMSに特化しています。
カウンセリング
精神的症状が強い場合は、抗うつ剤だけではなく、カウンセリングが有効な場合があります。当院では、その場合、専門の施設をご紹介いたします。
症状がPMSによるものではない場合
上記の症状の原因がPMSではなく、別の疾患によって起きていることもあります。
生理が始まっても症状が変わらない
PMSは生理の3~10日前に始まり、生理が始まると症状が軽減します。症状が生理期間に対応していますので、もし生理が始まっても症状が変わらない場合は、別の疾患の可能性があります。その場合はそのままにせず、医療機関を受診しましょう。当院では、必要に応じて、提携先の医療機関をご紹介いたします。
生理周期に対応しているが、別の疾患によって起きている
月経困難症
月経困難症になると、酷い生理痛、吐き気、下痢などで日常生活に影響が及びます。こうした症状は、生理が始まるとともに起こります。生理中の症状はPMSとは異なりますので、対処法も異なります。
PMDD(月経前気分不快障害)
PMSと同じ時期に症状が現れますが、PMSより精神的な症状が強く、やはり日常生活に支障をきたします。症状から、うつ病などの精神疾患と間違えられやすく、精神科や心療内科にて抗うつ剤を処方される方もいます。 症状が生理周期に対応して生じる場合は、症状の内容にかかわらず、まず婦人科にご相談ください。
更年期障害
更年期障害は、45~55歳頃の更年期に起こる症状です。症状自体はPMSと類似するため間違われることもありますが、原因が異なるため、治療法も異なります。