乳房の精密検査BREAST

乳房の精密検査BREAST

乳がん検診の結果が「要精密検査」であった

要精密検査の結果が出ても、乳がんであると診断されたわけではありません。検診で行ったマンモグラフィ検査・乳腺超音波検査によって発見された病変の状態・治療を要するのか診断するために精密検査を行います。精密検査は4種類あり、下記の通りです。

  • 「細胞診」(穿刺吸引細胞診) 病変に細く長い針を刺して細胞を採取する
  • 「細胞診」(針生検) 局所麻酔を用い、ボールペンの芯くらいの太い針を刺し、組織採取する
  • 「吸引式乳房組織生検」 病変を吸引しながら組織採取する
  • 「外科的生検」 病変の一部を外科的に切除する

石灰化とは

石灰化

乳がん検診で石灰化というものがありますが、石灰化は乳がんではありません。石灰化は良性・悪性とあり、検診においてがんの疑いがある乳房内の石灰化した部分を探します。

良性の乳腺石灰化とは

良性の石灰化が形成されるのは、乳管沿い・腺葉という乳汁を作る場所からの分泌液にできた沈殿物です。その他に、嚢胞・線維腺腫にできる場合もあります。

乳がんと関連している石灰化

石灰化を発見する上で最も有効な検査機器がマンモグラフィであり、左右の乳房2方向ずつの合計4枚撮影することが望ましいです。そして、がん細胞は増殖するときにできる分泌物・がんの壊死で石灰化が起こります。マンモグラフィで石灰化と指摘され、乳腺超音波検査を行っても病変が鮮明にわからない場合にはステレオガイド下マンモトーム生検(吸引式乳房組織生検)検査することが有効であり、検査に適応していると判断した場合には検査を実施できる施設を紹介させていただきます。

乳がん検診で「構築の乱れ」と指摘された場合

腫瘤が鮮明でないものの、乳腺構築がひきつれる・歪んでいる場合に、構築の乱れがあると指摘されます。同じ部分に手術歴があると術後の変化として同じように指摘されることがあります。さらに、良性・悪性の場合があり、がんの可能性がある場合には精密検査が必要となります。

乳がん検診で「局所的非対称性陰影(FAD)」と指摘された場合

マンモグラフィ検査で左右が部分的に非対称見られる所見を、局所的非対称性陰影(FAD)といいます。局所的非対称性陰影(FAD)をマンモグラフィのみで指摘された場合、乳腺超音波検査か再度マンモグラフィ検査を受けることでしこりの有無や、しこりのように見えている部分を明確にして判断します。

乳がん検診のマンモグラフィ検査でわかること

マンモグラフィ検査の結果欄には、カテゴリー分類と記載されています。乳がんの可能性がどの程度であるかをカテゴリー分類で表しています。

マンモグラフィ カテゴリー分類

カテゴリー1

異常なし

乳がんの可能性なし

カテゴリー2

良性病変のみ

乳がんの可能性なし

カテゴリー3

乳がんを否定できない

がんの可能性510

カテゴリー4

乳がんの疑い

がんの可能性3050

カテゴリー5

マンモグラフィでは乳がん

がんの可能性ほぼ100

参考文献:患者さんのための乳がん診療ガイドライン2014年版

乳がんの種類

乳がんの種類

乳がんは「浸潤がん」「非浸潤がん」「パジェット病」の大きく3種類に分類され、乳がんは乳腺を構成する乳管・小葉の上皮細胞の組織に発生します。「浸潤がん」は乳管・小葉を包んでいる基底膜を破って出てくるものです。「非浸潤がん」は発症部位によって「非浸潤性乳管がん」「非浸潤性小葉がん」とあり、がん細胞が乳管・小葉に留まるものをさします。乳がんの約8割は「浸潤がん」であり、その中でも「浸潤性乳管がん」「特殊型」に分類され、「浸潤性乳管がん」から「乳頭腺管がん」「充実腺管がん」「硬がん」の3種類に分類されます。また、「パジェット病」は、乳管がんが乳頭に到達し、乳頭部にびらんができるものをさします。

Q&A

良性の腫瘤が乳がんに変わることはありますか?

乳腺炎(にゅうせんえん)

乳汁のうっ滞・細菌感染によって発症する乳房の炎症です。乳房の赤み・痛み・腫れ・膿・しこりなどが起こります。乳腺炎と乳がんに直接関連はないものの、痛みがなく乳房の腫れを感じた場合には炎症性乳がんの可能性があります。症状の改善が見られない場合、乳腺外科医のいる医療機関を受診することをお勧めします。

乳腺線維腺腫(にゅうせんせんいせんしゅ)

乳房の良性腫瘍である乳腺線維腫は、10代後半~40代後半に多く発症するとされています。触れるとよく動くコロコロしたしこりができます。特別な治療は不要であり、乳がんとの直接的な関係もありません。

葉状腫瘍(ようじょうしゅよう)

初期段階では線維線腫に似ており、ほとんどの葉状腫瘍は良性です。また、急速に大きくなる特徴があります。ただし、中には良性・悪性の境界型や非常に稀ではあるものの転移しやすい悪性のものもあります。治療法は原則として、腫瘍の完全切除を行います。

乳がん検査の結果、精密検査の指示がありました。乳がんの可能性は?

マンモグラフィ・乳腺超音波検査の結果と組織診の結果が同じ場合、乳がんの確定診断を行い、治療方針を立てて治療をはじめます。

細胞をとってくわしく調べるとは、どのような検査でしょうか。

乳腺超音波で乳房のしこりを確認しながら、しこりのある部分に注射器の細い針を刺し、細胞採取します。これを穿刺吸引細胞診といいます。採取した細胞はスライドガラスに吹き付けて染色され、がん細胞の有無を顕微鏡で確認します。検査結果は2週間後に郵送またはご来院時に行います。検査が終わったら医師より指示があります。

組織をとってくわしく調べるとは、どのような検査をするのでしょうか

(1)良性であるが成分の分析をする必要がある場合、(2)悪性の可能性がある場合、(3)穿刺吸引細胞診で「鑑別困難」「悪性の疑い」「検体不適正」などの乳がんを否定できないときには診断のために細胞の塊を採取する組織診を行います。当院で行う組織診は針生検であり、乳腺超音波でしこりの位置を確認し、局所麻酔を行います。その後、少し太めの針をしこりに刺して組織採取します。検査結果は、検査後2週間の外来時にお伝えしています。

細胞診と組織診について
検査の種類 細胞診 組織診
検査結果でわかること がん細胞の有無を確認する。偽陰性率が3~4.1%のため、がんであるか明確にするための検査です。 がん細胞の有無を確認する。組織採取するため、偽陰性率は0~3.6%であるため、良性・悪性でどのようなタイプであるかわかる検査です。
検査所要時間 検査自体の所要時間は10~15分程度であり、来院からご帰宅までは1時間~1時間半程度かかります。 検査自体の所要時間は30分程度であり、来院からご帰宅まで1時間~1時間半程度かかります。
検査終了後の注意点 日常生活における制限は特にありません。 出血する可能性があるため、検査当日の飲酒・入浴・激しい運動は控えます。翌朝からは通常通りの生活をお過ごしください。

※保険診療で3割負担の場合であり、麻酔の有無によって変動があります。

細胞診・組織診の判定区分とは

細胞診の結果では、クラスⅠ~Ⅴまで判定し、良性・悪性・判定不能の3つの結果が出ます。万が一悪性の乳がんで合った場合、どのタイプのがんであるか判定を行い、治療方針の決定に有効となります。

細胞診の判定区分
クラスⅠ 正常な細胞
クラスⅡ ほとんど正常な細胞
クラスⅢ 判定不能
クラスⅣ 極めてがん細胞に近い
クラスⅤ ほとんどがん細胞

※乳がんの「ステージ」区分とは、異なる分類となります。

乳がんと診断されたら

乳がんと診断されたら

乳がんは、正確な診断と正確な治療を継続することによって、完治が見込める疾患です。当院で、乳がんの確定診断を受けた方には、患者様の近隣の病院・ご希望の医療機関への紹介状をご用意いたします。紹介状をお持ちになり、各医療機関の治療方針に則って治療を受けていただきます。なお、当院で乳腺外科より確定診断を受けたものの、かかりつけ医がない場合には、当院の連携先にご紹介いたします。
乳がんと診断を受けたことで、気持ちが落ち込むことと思います。しかし、乳がんは正確な治療を選択し、継続させることで完治が見込める疾患です。マイナスに捉えることなく、前向きな気持ちで治療に取り組みましょう。ご不明点などどんな些細なことでも構いませんので、お気軽にご相談ください。今後の治療方法について一緒に考えましょう。

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